クロッキーはスピードを競うのではなく、
スピードと正確性の両方を求められるものです。
それを両立させることはまさに「矛盾」しますが、
大切なのは両立よりもむしろバランス。
わかりやすくいえば文字を書こうとする際に「レタリング」を用いるのと、
ただ「字を丁寧に書く」のとの違いです。
練習量や対象の複雑性にもよりますが、2分という時間があれば
人物の顔だけでなく全身を描くことは十分に可能です。
初めて描く場合と、2回目に描く場合とでは当然、違ってきます。
そうした絵を「サイン」とみなすなら、基本的に書き直しはできないので、
2回目よりも1回目のクロッキーのほうが重要になります。
初心者はとにかく「顔」ばかりを入念に描き続ける傾向があり、
全身はおろか手や足の大きさすら把握できないことが多いです。
極端な話、顔に1時間かけて、体は1分で済ませてしまいます。
それはいけません。
「顔が上手い」とか「体が下手」というように得手不得手を作るのではなく、
「顔も体も平均的」に描くことが大切です。
慣れていない人の絵は、パッと見て明らかに顔と体の雰囲気が違っています。
顔だけ取ってつけたように見えたり、体だけ妙に線が弱くなったりします。
俗にいう「顔だけ絵師」がそれです。
「自分は顔が得意だから、顔は常に入念に描こう」とするよりも、
「顔も体も平均的に描こう」としたほうがいいのです。
そのような心がけでスケッチに臨めば、何でも描けるようになります。
可能な限り1本の線で描きましょう。
影の部分は塗りつぶしたり斜線で埋めたりしなくても、
明部と暗部の「境界」を1本の線で分けるように描くだけでいいです。
アニメの原画などの絵で、シャドウとハイライトの境界を示す線を
色鉛筆で区分したものを見たことがあると思います。クロッキーやスケッチにおいても
陰影を簡単に素早く描画する手段として役に立ちます。
「面」を意識するも、面として描くには時間がかかるので、
境界を「線」として描くことが重要です。
そうです。とにかく「線」が重要なのです。
「アタリ」をつけなくても、複数の人物をスケッチすることは可能です。
下書きも消しゴムも使わないので、相当な経験が必要です。
しかしパース(遠近法)をうっかり見落としていると、
右ページのように修正せざるを得なくなることがあります。
こんなミスをしないように、もっともっと精進する必要があります。
ほんの数分で観察と描画を完結させるクロッキーというのは、
画力、特に1本の線で表現する力を飛躍的に向上させます。
あすさんのスケッチ講座もすっかり充実してきました。
「字を書くように描く」
という感覚がわかってきたでしょうか。
人物をスケッチするのは、ちょっと複雑な「文字」を書くことに似ています。
文字というのはいくつかの線分の組み合わせでできています。
「できるだけ1本で描く」ことの意味ももう十分に理解できたでしょう。
そして覚えるまでその「文字」を描き続ければ、自分の名前をサインするのと
同じような感覚で、しかも素早くスケッチできるようになるということです。
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男の体のバランスがおかしい人増えた